ご恩は忘れません

TS3W0269
大学時代、勉強もせずろくに学校にすら行かなかった私ですが、卒業時に必要なある一つの単位がどうしても取れませんでした。
1年生から落とし続けた苦手な先生の苦手な教科、何ら対策を講じなかった私は見事に4年生でもNG。
ところが卒業論文のゼミの担当の先生が私の知らないうちにこの教授にかけあって下さり、ある本の訳をレポート提出することで許していただくことになったのです。
ありがたいことこの上ないはずなのに、当時の私はすぐ取り掛かるどころか東京に遊びに行ったりして貴重な時間をつぶしたのでした。
提出期限まじか、重い腰を上げてレポートを書きはじめましたが、分厚い本を訳すのは並大抵のことではありません。
「もう無理だ、間に合わない」アパートのベッドで横になっていたら突然、同級生が訪ねてきました。
彼女も同じ単位を引きずっていましたが、4年生で見事にクリア。
「あきらめちゃダメ!」何と寝ている私の横で机に向かい、彼女が訳の続きを書きはじめました。
「もう、いいよ」当人は親への言い訳を考えながらふて寝。
ところが夜中に目を覚ますと彼女はまだ書いているので申し訳なくなりました。
今度は彼女に寝てもらい私が続きを書く、こうして筆跡は微妙に違っていましたが、夜が明け期限ギリギリでレポート提出し何とか大学を卒業することができたのでした。
もし、ゼミの先生が交渉してくれなかったら、
もし、彼女が私を手伝うために訪ねて来なかったら、
間違いなく私は大学を卒業できず、銀行に入行できず、ただ4年間遊んで暮らしただけになっていたことでしょう。
奇遇にもこの大恩あるお二人とは今でも連絡を取り合っており、たまに何食わぬ顔してお会いしますが、このご恩は忘れてはいけないと胸に刻んでおります。
どうしようもないダメダメな学生だった私ですが、今は足を洗って社会貢献したいと本気で思っています。