主人と共にお世話になった築地の院長は、本当にマイペースで長嶋茂雄さんのような人。
「指圧はね、地球を圧すようにするんだよ」
「極意を教えるよ。おなごを抱くように優しくだよ」
岩手弁が抜けないからではなく、難しすぎて30代の私にはよく理解できないお話でした。
そんな院長に私は、いつも言いたいことを言い、ごちそうしてもらう時は甘え放題、食べ放題。
重度の腰痛の方を指圧していて、手におえなくなると院長に丸投げする、といったこともやりました。
自分が疲れたら院長に指圧してもらい、暇な時こっそり赤坂のしろたえにケーキを買いに行ったことも。
そして毎年一か月休んでは海外放浪、私は目を覆うばかりの不良従業員でした。
いっちょ前のつもりでアルファウエーブ新橋店に入社して、最初に気付いたのが、「後ろにもう誰もいない」ということ。
以前のように焦って後ろを見ても、もう誰も助けてはくれないのです。
本当は当たり前なのですが、どんなに難しくても自分一人でやりきるしかない。
このとき初めて、「ああ、私は今まで院長に助けてもらっていたんだ」と気付きました。
おしゃべりをするときは一見、キャッチボールしているように盛り上がりますが、実はお互いに自分の番が来るのを待っているだけで、ほとんど相手の話を聞いていなかったという私たちは、よく親子に間違えられたものです。
一緒にいるときは当たり前、あるいは時々面倒くさいなあ、と思っていました。(親のような感じです)
今こうして指圧で生きていけているのは院長に指圧を教えてもらったから。
ただただ感謝、です。