子供の頃、先生に好物を聞かれた私は「麦ごはんに味噌」と答えたそうです。
後に母が「そんなことを外で言うなんて恥ずかしかった」と言っていました。
当時我が家は小さな家で二人のおじさんも同居、七人の大所帯でありながら電話がなく、いつもお隣さんに呼び出してもらっていたほど。「麦ごはんと味噌」は貧乏な食生活の象徴と母は思ったのでしょう。
祖母と私たち姉弟以外はみな働いており、家を買うために助け合って生活していました。祖母はよく土鍋に麦ごはんを炊いてくれて、それには自家製のてんとう味噌がとてもよく合った、と記憶しています。借りた畑で麦ができるとフライパンで煎って、やかんで麦茶を煮出してくれました。外から帰ると家じゅうに広がる麦茶の香りが私は猛烈に好きでした。
母が私達にアイスクリームを与えるのを知るや、「そんなもん食べさせては良くない、スイカにしなさい」と言うのが祖母でした。
近年、私が自家製の味噌、梅干しや切り干し大根などを作るようになったことには、祖母の影響が大きいと思われます。もちろん作り方など覚えていないので本を読みながら試行錯誤ですが、趣味のように楽しんでいます。東城百合子さんの「自然療法」やマクロビオティックの本を読み、食事は大切なんだなあ、とは思いますが、そんなにタイトな制限はしていません。続けていくことが一番大切な気がするので、楽しいことをやってみるという感じです。試しに混ざり物のない本物の塩、醤油、みりんなどを買うようになってから始まったこの食生活、気づけば十年目になりました。