亡き父は滅多に笑顔を見せない人だった。
帰省で到着するや否や「いつ帰るんか?」と渋い表情で問い、
「元気?」と聞けば「ようよう(やっと)生きとる」と不満顔。
顔を見れば愚痴か説教が始まるので、常に心の中で身構えていた。
3年前の10月帰省した際、東京へ発つ朝、身支度整えリビングへ。
「気イ付けて帰れエよ」父の珍しく穏やかな笑顔に内心驚いた。
それが私の見た生きている父の最期の姿だった。
年末風呂上がりに倒れ、しばらくして亡くなった。
近年、朝の血圧が高い時は父の笑顔をありありと思い出すと正常値になる。
死して尚、こんな形で私を助けてくれる父には感謝しかない。